コロナ感染症でトイレ等の設備が設置されていない建物の表題登記

登記
土地家屋調査士 安井功
土地家屋調査士 安井功

昨今の新型コロナウイルス感染症の拡大により、住宅設備部材の供給が遅延滞留しているようです。特にトイレ(便器)やキッチンの部材が遅延していると建築業者様からお伺いすることが良くあります。

こんな状況では表題登記の申請ができないのか?解説したいと思います。

 

 




1.登記できる建物とは

登記の対象となる建物は、屋根および周壁またはこれらに類するものを有し、土地に定着した建造物であって、その目的とする用途に供し得る状態にあるものでなければならないとされています。(不動産登記規則 第111条)

1-1.建物(居宅)の目的とする用途に供し得る状態とは?

表題登記には建物の種類を調査し、登記申請書に記載する必要があります。建物の種類を「居宅」と判断するには、それなりの住宅設備(キッチン、風呂、トイレ、洗面など)が施工されていなければなりません。また登記申請をする際に、スムーズに登記を完了させるために住宅設備関連の写真を添付する必要があります。

2.表題登記ができないとどうなる?

新型コロナウイルス感染症拡大の影響で「住宅設備が設置されていない」=「表題登記申請ができない」=「権利関係の登記ができない」=「融資実行ができない」=「建築会社にお金が入らない」となり、社会的にも大問題となってしまいます。



3.そこでその対策は?

法務省民事局民事第2課からこの対策として、登記申請をする建物にトイレ等の住宅設備が設置されていない場合であっても下記のいずれかに該当するときには建築基準法第6条第1項の確認済証または同法第7条第5項の検査済証に記録された「主要用途」に対応した建物の種類の用途に供し得る状態にあると認定して差し支えないという取り計らいをいただいています。

3-1.具体的にどのように登記申請する?

調査報告書規則第93条)に部材が供給され次第トイレ等の設備を速やかに設置される旨を記載する

調査報告書にどのように書けばいいのか?私はこのように記載しています。
「現状では、トイレ部材(便器)が未設置です。これは、新型コロナウイルス感染症拡大に伴い便器の供給が滞っているため設置されていないことを確認しています。また下水配管も確認できトイレとしての設備であることに相違ありません。よって建物の用途は「居宅」に相違ありません。」

申請建物の「工事施工者が作成した情報」または「検査済証」
「検査済証」はわかりますよね~。「工事施工者が作成した情報」についてはいわゆる「上申書」ということになると思います。つまり建築業者様に「上申書」を追加してもらえばよいということですね。「上申書」の内容として、私はこのように記載しています。
「トイレ等の部材は新型コロナウイルス感染症拡大の影響で供給が滞っており現在は施工できない状況ですが供給され次第、速やかに施工いたします。よって建物の用途は居宅に相違ありません。万一、この件に関し問題が生じた場合には弊社において責任を持って処理し貴庁にご迷惑をおかけいたしません」



4.まとめ

上記の方法で、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で部材が設置されたいため、表題登記が申請できないという事態は回避できるようです(私は2020年4月に大阪法務局管内でこの手法で登記申請し受理されました)。

ただ、コロナの緊急事態宣言(大阪府)が出てから、法務局の職員さんの出勤数を減らしているようで申請から完了まで通常の数倍、時間がかかっている様です。融資実行日や決済日に間に合わなくならないように建築業者様との綿密な打合せが必要ですね。

はやくコロナ騒ぎが収束するようひとりひとりの行動に注意が必要ですね。

 

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