不動産登記法改正Vol.3~その他の項目をわかりやくす解説

法令
土地家屋調査士 安井功
土地家屋調査士 安井功

令和3年の不動産登記法改正において、相続登記と住所変更登記の義務化が新設されました。今回はその他の改正項目について触れてみたいと思います。

1.国外に住所を有する者の国内連絡先を登記~第73条の2

第73条の2

所有権の登記の登記事項は、第59条各号に掲げるもののほか、次のとおりとする。
一 (略)
二 所有権の登記名義人が国内に住所を有しないときは、その国内における連絡先となる者の氏名又は名称及び住所その他の国内における連絡先に関する事項として法務省令で定めるもの
2(略)

不動産登記法制度は不動産の表示および権利を公示するための制度です。境界を確認したい場合など隣地の所有者に連絡するためには、基本的に登記記録(住所・氏名)を手掛かりとすることになります。所有権登記名義人が死亡や住所変更していることによる連絡困難性については、「相続登記の義務化」、「住所変更登記の義務化」で手当てされることになりました。

一方、所有権登記名義人が外国に居住していて、連絡を取ることが困難なケースが増加しています。そこで、外国に居住している所有権登記名義人に容易に連絡を取ることが出来るように、国内における連絡先を所有権の登記の登記事項とすることとされました。ただし、当面の間は、国内に連絡先がない旨の登記をすることも許容されるようです。

この制度は令和6年4月1日に施行されます。




2.DV被害者等の保護~第119条第6項

第119条第6項

登記官は、第一項及び第二項の規定にかかわらず、登記記録に記録されている者の住所が明らかにされることにより、人の生命若しくは身体に危害を及ぼすおそれがある場合又はこれに準ずる程度に心身に有害な影響を及ぼすおそれのあるものとして法務省令で定める場合において、その者からの申出があったときは、法務省令で定めるところにより、第一項及び第二項に規定する各書面に当該住所に代わるものとして法務省令で定める事項を記載しなければならない。

不動産登記法制度は不動産の表示および権利を公示するための制度です。よって、誰でも登記情報を取得することが出来ます。一方、所有権登記名義人がDV被害者である場合、DV加害者が登記情報を取得することによって、被害者の住所を知ることができ、被害者の生命や身体に危害がおよぶ可能性があります。

そこで、DV被害者のほか、ストーカー行為の相手方、児童虐待を受けた児童など、住所が明かされることにより、生命や身体に危害がおよぶおそれがある場合は、その者からの申出により住所に代わるものとして、例えば、その者から委任を受けた弁護士が所属する事務所や被害者支援団体、法務局の住所などを記録できることとなりました。

この制度は令和6年4月1日に施行されます。




3.所有不動産記録証明書~第119条の2

第119条の2

何人も、登記官に対し、手数料を納付して、自らが所有権の登記名義人(これに準ずる者として法務省令で定めるものを含む。)として記録されている不動産に係る登記記録に記録されている事項のうち法務省令で定めるもの(記録がないときは、その旨)を証明した書面(以下この条文において「所有不動産記録証明書」という。)の交付を請求することができる
2(略)
3(略)
4(略)

登記記録は、一筆の土地または一個の建物ごとに作成される物的編成主義が採られていますので、所有者ごとに所有する不動産の一覧を証明する制度はありませんでした。そのため、相続人が被相続人の所有する不動産を把握できず、相続登記がされないまま放置され、所有者不明土地の発生につながることが想定できます。

そこで、自らが所有権の登記名義人として記録されている不動産の登記事項を証明した書面の交付を請求できることとなりました。

なお、所有不動産記録証明書は、所有権の登記名義人のみを対象としており、現時点では表題部所有者を対象としていませんが「これに準ずる者として法務省令で定めるものを含む」とされていることから将来的には表題部所有者を対象とすることになるかもしれません。

この制度は令和8年4月施行される予定です。




 

 

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