不動産登記法改正Vol.2~住所変更登記の義務化をわかりやくす解説

法令
土地家屋調査士 安井功
土地家屋調査士 安井功

令和3年の不動産登記法改正において、相続登記と住所変更登記の義務化が新設されました。今回は住所変更登記の義務化について触れてみたいと思います。なお、この制度は令和8年から施行される見込みです。

1.住所等の変更登記の申請義務化~第76条の5

第76条の5

所有権の登記名義人の氏名若しくは名称又は住所について変更があったときは、当該所有権の登記名義人は、その変更があった日から2年以内に、氏名若しくは名称又は住所についての変更の登記を申請しなければならない。

上記条文の黄色マーカーのとおり、変更があった日から2年以内に氏名(婚姻による氏の変更など)や住所の変更についての登記申請をしなければならないとされました。

条文には明記されてませんが、表題部のみの登記であって、甲区(所有権)の登記がなされていない場合の表題部所有者については本制度の適用はありません。表題部のみの登記というと「建物」のケースがほとんどなので、法制度の趣旨(行方不明となる土地所有者をなくす)からするとこれで良いのかと思います。




2.職権による氏名等の変更の登記~第76条の6

第76条の6

登記官は、所有権の登記名義人の氏名若しくは名称又は住所について変更があったと認めるべき場合として法務省令で定める場合には、法務省令で定めるところにより、職権で、氏名若しくは名称又は住所についての変更の登記をすることができる。ただし、当該所有権の登記名義人が自然人であるときは、その申出があるときに限る。

住所変更登記申請の義務化に伴い、登記官が職権で住所変更登記を行うことができるようになりました。登記官は、所有権の登記名義人の氏名若しくは名称または住所について変更があったと認める場合には、職権で氏名若しくは名称または住所についての変更の登記をすることができることとされました。

但し、個人情報保護の観点から所有権の登記名義人が自然人であるときは、その者の申出があるときに限るとしています。自然人については、住民基本台帳ネットワークシステムから必要な情報を取得し、法人については商業法人情報システムから必要な情報を取得することを想定しているようですね。




3.義務違反の場合は「過料」

改正後 第164条

第36条、第37条1項若しくは第2項、第42条、第47条第1項(第42条2項において準用する場合を含む。)、第49条第1項、第3項若しくは第4項、第51条第1項から第4項まで、第57条、第58条第6項若しくは第7項、第76条の2第1項若しくは第2項又は第76条の3第4項の規定による申請をすべき義務がある者が正当な理由がないのにその申請を怠ったときは、10万円以下の過料に処する。

2.第76条の5の規定による申請をすべき義務者がある者が正当な理由がないのにその申請を怠ったときは、5万円以下の過料に処する。

改正前の第164条においては、表示に関する登記申請の義務を怠ったものに対する過料(10万円)が設けられていましたが、相続登記の義務化、住所変更登記の義務化に伴い、表示と同様に、過料が設けられました。

住所変更登記申請の過料については、住民基本台帳法における転入等の届出義務違反と同額の5万円以下とされています。




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