建物表題部の所有者更正登記~調査士報告方式が使えず焦る!

建物登記
土地家屋調査士 安井功
土地家屋調査士 安井功

こんにちわ。

土地家屋調査士の安井功です。

今回は、建物表題登記完了後(所有権保存登記の前)に登記されている所有者の更正をする場合についてのレポートとなります。ちょっとレアなケースなので一緒にお勉強いたしましょう。




1.建物所有者更正とは?

下の建物登記事項証明書のように、既に表題登記が完了している(保存登記がなされていない)場合で、何らかの理由で所有権者に更正が生じた(例えば持分を間違えたとか共有のところを単有にしてしまった等)ときに「建物所有者更正登記」を申請する必要があります。

通常、表題登記後は保存登記や抵当権設定登記がなされる(銀行からの融資実行日が決まっている)ので表題部に錯誤があると更正に時間がかかるため焦ってしまいますよね。

2.建物所有者更正の申請方法は?

登記申請に際して、通常はオンライン申請、しかも調査士報告方式を利用するのですが、「建物所有者更正登記」に関しては調査士報告方式が使えません(以下の登記に関する申請は調査士報告方式がNGとなっています)。

表題部所有者の更正や持分更正
②消滅承諾書を添付する土地の分筆、建物の分割・区分
③地役権の範囲が一部となる合筆
④敷地権が絡むものの一部の申請
⑤その他
よって、一部オンライン(半ライン)という申請方法になります。



3.建物所有者更正には…

建物所有者更正登記を申請しなければならないケースと必要書類について、以下の様にまとめます。

3-1.単有⇒共有

建物の所有者を単有(Aさん)としていたところ、実際は(AさんとBさんの)共有である場合について解説します。

必要書類は以下の通りで、申請人は共有者のひとりから申請できます(Bさんからの申請でOK)。

・Aさんの承諾書(実印、印鑑証明書付)
・Bさんの所有権証明書(上記承諾書兼用はNG)
・Bさんの登記申請委任状
・Bさんの住所証明書

3-2.単有⇒単有

建物の所有者を単有(Aさん)としていたところ、実際は(Bさん)である場合について解説します。

必要書類は以下の通りで、申請人はBさんから申請でOK。

・Aさんの承諾書(実印、印鑑証明書付)
・Bさんの所有権証明書(上記承諾書兼用はNG)
・Bさんの登記申請委任状
・Bさんの住所証明書

3-3.共有⇒単有

建物の所有者を共有(AさんとBさん)としていたところ、実際は(Aさん)である場合について解説します。

必要書類は以下の通りで、申請人はAさんから申請でOK。

・Bさんの承諾書(実印、印鑑証明書付)
・Aさんの登記申請委任状
※この場合は所有権証明書は必要ありません。

3-4.共有持分の更正

建物の所有者を共有(1/2、Aさんと1/2、Bさん)としていたところ、実際は(2/3、Aさんと1/3、Bさん)である場合について解説します。

必要書類は以下の通りで、申請人は共有者のひとりからでも申請できます。

・Bさんの承諾書(実印、印鑑証明書付)
・Aさんの登記申請委任状
※この場合は所有権証明書は必要ありません。



4.半ライン申請(特例方式)について

調査士報告方式が使えない建物所有者更正登記は、半ライン(特例方式)で申請するか、もしくは完全紙ベースで申請するしかありません。調査士報告方式で慣れてしまっていて、半ライン(特例方式)でのやり方を忘れてしまっているので、ちょっとその方法を掲載しておきます。

PDF化&署名してオンラインで添付できる書類は以下のとおり。

・建築確認書
・住民票、印鑑証明書
・引渡証明書、譲渡証明書など
・建物図面、各階平面図
・調査報告書

PDF化がNGで原本を提出しなければならない書類は以下のとおり。

・代理権限証書
・承諾書や上申書
これらの書類(所有者等が作成した書類)については、申請書の添付書面欄に「特例」と記載してわかりやすくします(例えば、代理権限証書(特例)のような感じで)。

5.建物所有者更正登記をやってみた

今回、私が受託した建物所有者更正登記は、「単有⇒共有」のパターンです。更正前の登記事項証明書には所有者「◎◎◎◎◎」さんの単有になっています。「●●●●●」さんと共有に更正します。

こんな感じで半ライン(特例方式)のオンライン申請書を作成します。申請人は新たに共有となる「●●●●●」さんです。

代理権限証明情報と承諾書は特例方式で、申請から3日以内に法務局に提出します。PDF化して添付した書類も原本を見てもらうために一緒に提出しました。

オンラインの申請用総合ソフトのメニューバー>アクションから「書面により提出した添付情報の内訳表」をプリントアウト。

この用紙と、特例方式で提出する委任状、承諾書をホッチキス止めして原本還付する書類と一緒に法務局に提出します。

書類提出後、法務局から電話があり、「承諾書に添付の◎◎◎◎◎さんの印鑑証明書は還付できません」とのこと…?当方としては還付されなくても大丈夫なので「はい、わかりました」と応えましたが還付できないのかなぁ~??




6.まとめ

滅多に遭遇しない「建物所有者更正登記」ですが、いざ申請しなければならないとなると厄介です。まず、納期が急がれる(保存・設定が待ち構えている)。それに、調査士報告方式が使えないので、半ライン(特例方式)または完全ペーパー方式での申請になります。調査士報告方式にどっぷり漬かっている者にとって、半ライン(特例方式)や完全ペーパー申請のやり方を忘れてしまっていることが多いです(私のように…)。

登記完了が急ぐため(提出書類を郵送しない)法務局に持参となります。法務局申請窓口には「番号札」が置いてあり「この番号札の札番はどこに記入するのだったっけ??」となってしまいました。番号札の横に「受領印照合票」という用紙が設置されており、その用紙の右下に札番号を記入する欄がありました(そうでした、思い出しました)。

事故簿の登記をする場合(とてもレアケース)もオンライン申請ができず、完全ペーパー方式になるので、色んなことを忘れないようにしておきたいものですね…。

 

 

 

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