土地の相続登記、住所変更登記を義務化!違反者には過料も、法制審議会が答申

登記
土地家屋調査士 安井功
土地家屋調査士 安井功

2021.2.11の毎日新聞に「相続土地登記、3年以内(法制審答申、違反者に過料10万円)」という記事が掲載されました。果たして、その内容は如何に…。




1.法制審議会、土地所有者の相続登記と住所変更登記を義務付

所有者が不明のまま放置される土地(全国で約20%)の問題解消のため、法制審議会は次の点について不動産登記法改正要綱を上川陽子法務大臣に答申されました。

相続登記3年以内に義務(違反者に10万円以下の過料)
住所変更登記2年以内に義務(違反者に5万円以下の過料)

2.相続登記の義務化について、相続人申告登記制度!?

要綱では、相続で土地を取得することを知った日から3年以内に登記を義務化することになります。違反者には10万円以下の過料となるようです。相続登記が義務化されると一般的に手続きの負担となるのが、被相続人(亡くなった方)の生後から死亡までの戸籍謄本(原戸籍謄本)、死亡時の戸籍附票が必要となります。

そこで、手続きの負担を軽減するために、法定相続人が自分の「戸籍謄本」と「住民票」を法務局に提出するだけで登記が完了する仕組み(「(仮称)相続人申告登記」制度)を新設されるようです。

3.住所変更登記の義務化について、職権登記もあり!

要綱では、引っ越し等で住所変更があった場合、所有している土地の所有権名義人の住所を変更する登記を義務化するようです。違反者には、5万円以下の過料となるようです。

また、法務局の登記官が土地所有者の住所が変更になっていることを調査できた場合には、本人に住所変更の事実を確認したうえで、職権で住所変更登記ができる仕組みを創設されるようです。




4.土地家屋調査士の立場から「まとめ」

4-1.登記義務化のメリット(調査士の立場から)

私たち土地家屋調査士は隣地所有者との境界確認をするために、隣地土地の謄本から所有者を確認します。よく遭遇する場面は、

①土地所有者が亡くなっておられ「相続未登記」
②住所変更登記がなされておらず、隣地所有者が不明

といったケースです。

①の相続未登記でも現地(隣地)に相続人(例えば奥さんや息子さん)がお住まいの場合は、事情を説明して(所有権者を確認するために)、被相続人の戸籍謄本や戸籍附票を手配していただくことで、相続人としての立場で境界確認をいただくことが可能です。

「相続未登記」で困ってしまうケースが、現地(隣地)には誰も居ないときです。土地登記簿(甲区)の住所・氏名を頼りに役所で相続人を探し出せない場面も多々あります。②の場合も同様で、現地(隣地)が空地や賃貸物件などで所有者を探し出せないケースも多くなっています。

上記の制度が実施されれば、私たち土地家屋調査士の業務もスムーズに推進することが可能となります。

4-2.「過料」は形骸化するのでは?

不動産登記法で「過料」と聞くと、まず思い当たるのが、「表題登記(報告的登記)に関する義務化」です。

例えば、新築で家を建てた(増築した)場合、新築後1ヶ月以内に建物表題登記(表題変更登記)を申請する義務があります。建物を取り壊した場合も同様に、1ヶ月以内に滅失登記を申請する義務があります。また、土地でも地目が変更になった場合、1ヶ月以内に地目変更登記を申請する義務があります。いづれも、違反した場合は10万円以下の過料となっています。

では実際に、今まで過料となった方は居たのでしょうか…。多分、だれも過料処分になっていないように思われます。

これらの登記は不動産の権利を明確化する大切な登記なので義務化されています。違反者の場合には過料という制度になっているのはそのためなので、新築未登記、増築未登記、滅失未登記の場合はお近くの土地家屋調査士にご相談ください。

4-3.詳細は新聞記事をご覧ください

5.法務局作成のyoutube(長期相続登記等未了土地の解消)

長期間相続登記等がされていない土地について,相続人となる人が誰かを法務局の登記官が調査し,職権で登記記録にその旨等を記録した上で,直接相続人に通知をして,相続登記を促す制度です。

ここでは,通知の趣旨・目的や通知を受け取った後の相続登記の申請手続を紹介していますので、是非ご覧ください。

今回の通知をきっかけとして,未来につなぐ相続登記をしていただきますよう,お願いします。

 

 

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