被相続人名義の未登記建物を登記、法定相続情報や未成年特別代理人もある~不動産登記実務編②

建物登記
土地家屋調査士 安井功
土地家屋調査士 安井功

こんにちは、土地家屋調査士の安井です。

今回は実際にご依頼いただいた登記業務に関するお話です。

ご依頼いただいた内容は「被相続人所有の未登記建物を登記してほしい」ということでした。法定相続情報はありますが、未成年者が相続人に含まれる場合について記載します。




1.ご依頼内容(被相続人所有の未登記建物の登記)

ご依頼いただいた内容について詳しく説明すると、

・亡夫が残した建物(平成29年新築)を相続人から登記したい
・法定相続人は妻、子(未成年者)が3名
・法定相続情報や遺産分割協議書はご用意されている
・子(未成年者)は特別代理人の選任をいただく

2.被相続人所有の未登記建物を登記する場合の必要書類

被相続人所有の未登記建物を建物表題登記をする場合、必要となる書類として「被相続人の所有建物を誰が相続したのかを証明する書類」、「実際に被相続人がその建物を所有していたことを証明する書類」、「相続人の住民票」、「建物図面・各階平面図」ということになります。

建築後、4年程度の建物でしたので、所有権を証明する書類として「建築確認書」、「引渡証明書(工事施工者の印鑑証明書付)」がありました。よって、所有権者が亡夫であったことは容易に証明できました。

2-1.被相続人の証明

今回の場合、被相続人の法定相続情報が登記されています。本来であれば、被相続人の出生から亡くなるまでの戸籍謄本や戸籍附票、相続人の戸籍謄本および住民票などをご用意いただくのですが、法定相続情報があればこれらの謄本関連書類は登記申請には不要となります。




2-2.未成年者の特別代理人の証明

今回は、相続人に未成年者が含まれているので、家庭裁判所で特別代理人の選任を受けていただく必要があります。

そして、遺産分割協議をおこなっていただき、遺産分割協議書に特別代理人の署名および印鑑証明書を添付していただいて、未登記建物の相続人を決定していただく必要があります。

3.未登記建物の調査

今回のご依頼の場合、未登記建物は市役所で固定資産税評価がなされていましたので、市役所で未登記建物の評価に使用されている図面を閲覧させていただきました。市役所によって、コピーを交付いただけたり閲覧のみでトレース(写真)可という場合もありますので、市役所のご担当者様に確認する必要があります。

今回は市役所固定資産税課から対象建物の図面をコピーしていただけました。この図面は「建物図面・各階平面図」を作成するときに参考となります(あくまで参考で、もちろん現地優先です)。この図面が現地と合致していない場合は、増築等も考えられます。増築があると認められる場合は、増築部分の所有者が誰なのか調査および証明する必要があります。

今回の場合は、現地調査の結果、増築なども無いようでした。



4.まとめ

本来、不動産登記法上では建物が新築された場合、所有者は「1ヶ月以内に表題登記を申請する義務」があり、違反があった場合は「10万円以下の過料」となっています(実際には誰も過料を支払ったことが無いようで、今回の場合も過料の支払いはありません)。

被相続人が所有していた建物(未登記建物)を相続人が登記するには、上記のような大変な労力が必要となってしまいます。また被相続人の戸籍謄本を集めたり、相続人が多い場合は遺産分割協議書への押印(実印+印鑑証明書)の協力がいただけない場合もありそうです。

通常の登記に比べて、時間や費用がかかってしまいますので所有者が生前の内に登記されておかれることをおススメいたします。




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